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NHK朝の連続テレビ小説「まれ」の利益管理

2015年08月23日
NHK朝の連続テレビ小説「まれ」。

見ている方も多いのではないでしょうか。


ドラマもいよいよ大詰めですね。



能登でケーキ屋をオープンした主人公、希(まれ)。

オープン直後は繁盛したものの、2週間経つと売上はさっぱり。

大苦戦です。(よくあるパターンです)


販売するケーキを値段の安いものに変えたものの、赤字が続いているようです。



そんなドラマの中で出てくるグラフがこれです。





昨日の放送でも、幼なじみの高志に

「どうけ?店?」

と聞かれて

「赤字続きや」と答えたのは、このグラフを見てのことです。



縦軸を売上高、横軸が日、

そして損益分岐点売上高が横線で表示され、

毎日の売上高の推移が折れ線グラフになっています。




オープン当初の売上高は、損益分岐点を大幅に超えたものの、

その後売上がほぼ0円まで落ち込み、

価格帯を変えたことで、損益分岐点売上高近くまで回復してきたところです。


ケーキの売上個数も表示していますね。



確かにわかりやすいのですが、このグラフには問題があります。



【問題点1】

売れたケーキの種類によって材料費率が異なるはず。

材料費率が高いケーキが多く売れた場合、いくら損益分岐点売上高を超えても赤字になります。


グラフで損金分岐売上高を超えて「やった!」と思っても、

あとで計算してみるとまだ赤字!!いった具合です。



これを解決するには、縦軸を売上高ではなく粗利益にし、予想固定費を横線にすることです。


でも、一般的にはなかなか1日の粗利益はわかりません。

そこで、次のように考えるのです。

Aケーキは、1個売れると粗利が200円
Bケーキは、1個売らると粗利益が150円
  ・
  ・
  ・

と計算しておけば、商品別の売上個数さえわかれば、1日の粗利益は計算ができますよね。



さらにグラフをよくしようと思えば、

1ヶ月の累積でグラフをつくるといいでしょう。





縦軸は、累積粗利益(累積MQ)、横線は1ヶ月の固定費(F)とします。

当月の累積粗利益が1ヶ月の固定費を超えればその月は黒字ということになります。

左下の縦横0から月末日の固定費までを直線で結べば(計画MQ)1日あたりの損益分岐粗利益もわかります。



平日と休日で数字の差が大きい場合には、1週間単位でもいいですね。


それを横軸1年、横線は1年の固定費のグラフにすれば、今期の利益管理になります。


常に、先を先を見ていきたいです。




そして、もう一段よくするには、横線をもう1本引きます。

(固定費+目標利益)の横線です。


つまり、損益分岐点管理だけではなく、利益目標に対する管理ともなります。


※これはMQ会計(西順一郎氏考案)の考え方によるものです。



【問題点2】


グラフに表示されている損益分岐点売上高。


どうやって計算したのでしょうか。



通常は、

・家賃などの「固定費」÷(1−材料費率)

で損益分岐点売上高を計算します。



希のグラフでは、1日の損益分岐点売上高が8,820円のようですので、

逆算で類推すると、ケーキ屋さんの材料費率を35%として

 固定費 5,733円÷(1−材料費率35%)=8,820円

といったところでしょうか。(実際には1ヶ月を計算して営業日数で割ると思います。)

(休み無しの31日営業で固定費が5,733円×31日=177,723円/月は少なすぎると思いますが・・・)



ただし、留意点があります。

ケーキ店のように、売れ残りを在庫として残していけない業種で、

かつ、

さっぱり売れない店の場合

の材料費率・固定費の計算はさらに変わります。


朝、一定数のケーキをつくり、結局そのまま完売しないため追加で作らなかった場合、

売上が0円でも、売上が5000円でも、材料費は一定です。

売れ残りは廃棄処分するからです。


つまり、売れない店の材料費は、変動費ではなく固定費になってしまうのです。

「材料は変動費」という概念が崩れるのです。


そうすると、

損益分岐売上高=(通常の固定費+材料費)となってしまいます。


希の計算した損益分岐点はこのようにはなっていないのではないでしょうか。





ドラマの中で、希が価格帯の変更にあたって、

値段だけを下げたのではなく、

その値段で一定の利益がとれるケーキに入れ替えたのはよかったですね。


450円のマルジョレーヌを300円に下げるのは最悪です。

同じ売上だったとしても、

材料費が高い分粗利益は下がってしまうからです。




これからドラマではどのように店を持ち直していくのかわかりませんが、

日持ちがして廃棄ロスが少なく、さらに材料費率が低い「焼き菓子」を

メニューに追加するのはどうなんでしょうか。


もちろん、今日の放送で希が高志に言った

「高いさけ売れんのではなくて、お金を出してでも食べたいってケーキをうちや作れてないんかも。」

という点が基本です。



【投稿者:税理士 米津晋次
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