鯖江市が固定資産税を過徴収ミス。あなたの固定資産税も間違っているかも?
2018年05月26日
こんにちは。名古屋市緑区のよねづ税理士事務所 米津晋次です。今回は、固定資産税の徴収ミスについての話題です。
福井県鯖江市は5月18日、本来は非課税となる市内3法人の建物に対し固定資産税や都市計画税を課税するミスがあり、少なくとも計約785万円を過大に徴収していたと発表した。ミスは最も長い期間で1976年度から43年間続いていた。そのうち過去20年分について利息に当たる加算金約229万円を加え、総額約892万円を各法人に還付する。
市税務課によると、3法人はいずれも地方税法上非課税となる中小企業者でつくる協同組合で、対象の建物は事務所3件と倉庫1件、事務所兼倉庫1件。それぞれ9〜43年間にわたって課税された。徴収された額は、資料が残っている94年度以降だけでも約100万〜約439万円に上る。
(引用:福井新聞)
全国で発生している固定資産税の徴収ミス
97.0%の市町村で固定資産税のミス
市町村による固定資産税の徴収ミスは、過去から全国で発生しています。
総務省が平成24年8月28日に公表した「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によると、少しデータが古いですが、2009年度から2011年度の間に固定資産税の間違いがあった市町村の割合は、回答のあった団体のじつに97.0%に及んだようです。
名古屋市でも固定資産税の徴収ミス
名古屋市でも市が公表しているところによると、固定資産税の過徴収のミスは、2014年度から2016年度だけで989件も発生しています。
この3年間の返還額は、約1億円にもなったようです。
なぜ固定資産税の課税ミスが発生するのか?
どうして市町村による固定資産税の課税ミスが発生するのでしょうか。先ほど紹介した総務省公表の「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によると、まず、土地については、評価額の修正が29.9%、負担調整措置・特例措置 の適用の修正が22.9%、現況地目の修正が15.8%などとなっています。
また、家屋については、評価額の修正が29.7%、家屋滅失の未反映が23.6%、新増築家屋の未反映が20.6%などとなっています。
固定資産税の基本
(1)固定資産税は、市町村が税額計算する
税金の中には、所得税や法人税、贈与税、相続税のように自分で申告する「申告納税方式」と、自動車税、不動産取得税のように、自分で申告することなく役所側が計算して課税する「賦課課税方式」のものに別れます。
固定資産税は、「賦課課税方式」の税金で、市町村が固定資産税額を算出して課税します。
(2)固定資産税は1月1日時点の不動産所有者に課税される
固定資産税は、1月1日時点で土地や建物を所有している人に課税される税金(地方税)です。
(3)固定資産税の算出方法
土地については、市町村が決めた路線価に基づき、土地の形状や接道状況などを考慮して評価額が計算され、そこから軽減等を反映させて課税標準額が算出されます。
一方、建物については、といって、今、同じ建物を建てるとしたら、いくらかかるか(「再建築価格」といいます。)という考えで評価額が計算され、課税標準額が算定されます。
これらの評価は、毎年見直しがされるのではなく、3年に1回になっています。
(4)固定資産税の税率
固定資産税の税率は、多くの市町村では1.4%です。つまり、課税標準額×税率(1.4%)となります。
多くの市町村では、固定資産税と同時に都市計画税もかかります。都市計画税の税率は、0.3%です。
固定資産税の課税ミスをチェックする方法
(1)固定資産税の課税ミスは自分で見つける
市町村の間違いは、基本的に誰も見つけてはくれません。通常は、自分(自社)で見つけるしかないのです。
相続税の申告のために税理士が不動産の評価をする際に間違いを見つけることもあります。私も実際に相続税申告書作成の過程で過去数件の間違いを見つけています。
たしかに、評価内容について、細かくチェクするのは事実上困難です。市町村が行う法律に従った評価方法が複雑だからです。
(2)固定資産税のミスをチェックするポイント
そこで、次のポイントに絞って固定資産税をチェックするだけでもかなりのミスが発見できます。
毎年4月下旬ごろに届く固定資産税の通知書の中にある課税明細を用意してください。
もし、紛失してしまった場合は、市町村の税務課で「名寄帳」(なよせちょう)を発行してもらいましょう。
・新たに建築した住宅建物
住宅用用地については、「住宅用地の軽減特例」の対象になります。
建物がないか、住宅用以外の建物の下の土地には、住宅用地ではありませんので、この軽減特例は適用になっていません。
しかし、住宅建物を建築すれば、その下の土地は「住宅用地」に変更になりますので、「住宅用地の軽減特例」が適用され、土地の課税標準額が下がり固定資産税が軽くなります。
住宅建物を建築した場合には、その敷地について、その翌年の固定資産税の計算で軽減特例が適用されているかを確認してください。課税明細の中で、評価額である「価格」と、「課税標準額」がもし同じ金額になっている場合は、住宅建築により受けられる軽減特例が忘れられた可能性が高いです。
・「小規模住宅用地の軽減」と「一般住宅用地の軽減」
「小規模住宅用地の軽減」は、住宅1戸につき200uまでの部分の土地評価が固定資産税については1/6に、都市計画税については1/3になります。
住宅用地で200uを超える面積の土地について、その200uを超える部分についても「一般住宅用地の軽減」が適用されます。
「一般住宅用地の軽減」では、土地の評価が固定資産税は1/3に、都市計画税が2/3になります。(ただし、建物の延床面積の10倍まで)
住宅用地の場合、「小規模住宅用地の軽減」か「一般住宅用地の軽減」のいずれかの適用がある場合がほとんどなので、これら軽減特例が適用されているかを確認してください。
課税明細の中で、評価額である「価格」と、「課税標準額」がもし同じ金額になっている場合は、軽減特例の適用を忘れた課税誤りの可能性が高いです。
固定資産税の間違いを見つけたらどうすればいいか
まずは、市町村役場の税務課へ連絡して間違いを確認してください。そして、指摘した課税誤りが認められ、たとえ「今後修正します」と市町村の担当者が言ったとしても、それで納得しないでください。必ず過去に多く支払った固定資産税を還付してもらうよう請求し、手続きを確認してください。
それでは、過去何年まで遡って修正してもらえるかというと、法律上は最大5年分までになっています。
しかし、市町村によっては、条例で5年以上の還付を行ってくれるところがありますので、その不動産の所在地の市町村役場へ確認してください。
まとめ
ご紹介したように、役所が固定資産税の間違いをすることもあるのです。そのことを頭に入れて、市町村から届く固定資産税の課税明細を見てください。そして、今回ご紹介した点だけでもチェックしてみましょう。
【投稿者:税理士 米津晋次】
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