2019年度与党税制改正大綱(中小企業関係)
2019年01月07日
2018年12月14日に自民党、公明党による2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱が発表されました。例年この時期に発表され、通常はこのまま2019年3月までには国会で承認され成立し、2019年4月から施行となります。
今回は、2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、中小企業に関係する主な改正点について確認しましょう。
2019年度与党税制改正大綱|中小企業関係の改正点
2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、中小企業に関係する改正点は次のとおりです。
中小企業税制の延長
次の中小企業を対象とする税制について、その適用期限が延長になります。
・中小企業の法人税軽減税率の特例を2年延長(2021年3月31日まで)
・中小企業投資促進税制を2年延長(2021年3月31日まで)
・中小企業経営強化税制を2年延長(2021年3月31日まで)
・商業・サービス業・農林水産業活性化税制を2年延長(2021年3月31日まで)
・中小企業技術基盤強化税制の上乗せ措置を2年延長(2021年3月31日まで)
中小企業税制の追加創設
中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置が創設されます。
中小企業者の範囲変更
上記の各種税制の対象となる「中小企業者」の範囲が縮小されます。
法人設立届出書の添付書類の省略
新たに法人を設立した際に税務署へ提出する「法人設立届出書」に添付する書類が少なくなります。
2019年度与党税制改正大綱|中小企業税制の延長
2019年3月31日が適用期限になっている次の中小企業を対象とする税制について、その適用期限が延長になります。
中小企業の法人税軽減税率の特例概要
2016年(平成28年)4月1日以降の開始事業年度の法人税率については、大法人は23.4%です。
一方、中小法人は2段階の税率となっており、年800万円以下については15%、年800万円を超えると23.2%で大法人と同じ税率になります。
つまり、年800万円までの利益については法人税が軽減され、800万円を超えると大法人並みの税率となっています。
(出典:中小企業庁)
中小企業投資促進税制の概要
いわゆる中小企業投資促進税制(本来は「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除」といいます)とは、中小企業者などが適用期間内に一定の新品の機械装置などを取得等し、指定事業で使用した場合に、その使用し始めた事業年度において、30%の特別償却又は7%税額控除を認めるというものです。
(出典:中小企業庁)
中小企業経営強化税制の概要
いわゆる中小企業経営強化税制(本来は「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除」といいます)とは、青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者等が、適用期間内に特定経営力向上設備等を取得し、指定事業に使用した場合に、その使用し始めた事業年度において、特別償却又は税額控除を認めるものです。
償却限度額は、その取得価額の全額で、即時償却することができます。
また、税額控除限度額は、取得価額の7%相当額(特定中小企業者等においては10%)となっています。
(出典:中小企業庁)
商業・サービス業・農林水産業活性化税制の概要
いわゆる商業・サービス業・農林水産業活性化税制(本来は「特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除」といいます)とは、認定経営革新等支援機関等による経営の改善に関する指導及び助言を受けた青色申告書を提出する一定の中小企業者等が、適用期間内に、経営改善設備を取得し、指定事業に使用した場合に、特別償却又は税額控除を認めるものです。
償却限度額は、取得価額の30%で、税額控除限度額は、取得価額の7%です。
(出典:中小企業庁)
中小企業技術基盤強化税制の上乗せ措置の2年延長
中小企業技術基盤強化税制は、試験研究費の12%に相当する額を法人税額から控除する制度です。
そして、試験研究費を一定割合増加させた場合にはさらに上乗せがあり、最大で試験研究費の17%まで控除可能となっています。
(出典:中小企業庁)
中小企業税制適用期限の2年延長
これらの中小企業を対象とした優遇制度の適用期限は、2019年(平成31年)3月31日になっています。
今回の改正で、その適用期限が、2021年3月31日まで2年延長されます。
(出典:中小企業庁)
2019年度与党税制改正大綱|中小企業者の範囲縮小
中小企業の法人税軽減税率や中小企業投資促進税制などの特例対象とする中小企業者の範囲が大規模法人の範囲が拡大することにより変更されます。
現行の中小企業者の範囲
中小企業者とは、次に掲げる法人のことをいいます。
(1)資本金の額が1億円以下の法人
ただし、
・同一の大規模法人に発行済株式等の総数の2分の1以上を所有されている法人
及び
・2以上の大規模法人に発行済株式等の総数の3分の2以上を所有されている法人
を除きます。
(2)資本を有しない法人のうち従業員数が1,000人以下の法人
なお、上記(1)の「大規模法人」とは次のいずれかの法人のことを指します。
・資本金の額が1億円超の法人
・資本を有しない法人のうち従業員数が1,000人超の法人
このように大企業の子会社は、たとえ資本金が1億円以下の法人であっても中小企業向けの優遇税制は適用されないことになっています。
改正後の中小企業者の範囲
今回の改正により、「大規模法人」に次の法人が加わることになります。
(1)大法人(資本金5億円以上等の法人)の100%子法人
(2)100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人
この改正の影響により、中小企業者の範囲がこれまでより縮小することになります。
簡単にいえば、大企業の子会社だけでなく孫会社も対象からはずれることになるということですね。
中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置の創設
中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制の概要
中小企業が災害への事前対策を強化するための設備投資を後押しするため、自家発電機、制震・免震装置等の防災・減災設備を購入した場合に、20%の特別償却を可能にします。
対象
事業継続力強化計画(仮称)の認定を受けた中小企業・小規模事業者が対象です。
対象設備
事前対策を強化するために必要な次の防災・減災設備が対象設備です。
機械装置(100万円以上):自家発電機、排水ポンプ 等
器具備品(30万円以上):制震・免震ラック、衛星電話 等
建物附属設備(60万円以上):止水板、防火シャッター、排煙設備 等
税制措置の内容
取得した上記対象設備に対する通常償却に加えて取得価額の20%特別償却が認められます。
2019年度与党税制改正大綱|法人設立届出書の添付書類の省略
現行の添付書類
現状では、新たに法人を設立した際に税務署へ提出する「法人設立届出書」には、次の書類の添付が必要とされています。
・定款等の写し
・株主又は出資者の名簿
・設立趣意書
・設立時の貸借対照表
添付書類の簡素化
改正後は、新たに法人を設立した際に税務署へ提出する「法人設立届出書」に添付するのは、「定款等の写し」のみでよいことになります。
現行でも上記のすべてを添付していませんが、これで堂々と手間を少なくすることができそうです。
■2019年度与党税制改正大綱関係記事
・2019年度与党税制改正大綱の概要
・2019年度与党税制改正大綱(贈与税非課税関係)
・2019年度与党税制改正大綱(個人事業者事業承継税制)
・2019年度与党税制改正大綱(所得税関係)
・2019年度与党税制改正大綱(その他の相続税関係)
【投稿者:税理士 米津晋次】
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