【消費税改正前後も】切手類の経理処理はこうすべき
2019年09月26日
こんにちは。名古屋市緑区の税理士 米津晋次です。どこの会社でも、切手を買ったり郵便を出したりすることはあるでしょう。
この切手等の経理処理についてですが、切手や郵便の消費税の扱いについて少し複雑になっています。
さらに、消費税が上がる2019年10月1日前後の経理処理も考えなければなりません。
今回は、切手等の通常経理処理と、消費税改正前後の経理処理について説明いたします。
■切手類には消費税非課税(がかからない)
切手類には、消費税がかかりません。
その理由を簡単に説明すれば、切手類は、金券と同じようなものだからです。
さらに言えば、お金と同じという扱いなのです。
消費税法(別表第一)では、非課税扱いになるものが限定列挙されています。
その中に切手類が記載されています。
・日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(条文をわかりやすくしています)
したがって、切手類を購入したときは、消費税はかからないのです。
■郵便配達料は消費税課税
郵便局では、切手が貼られた封筒などを郵便ポストで集荷して各宛先に配達します。
この配達という役務提供は、消費税では課税取引です。
なぜかというと、ヤマト運輸や佐川急便が荷物を配達するのと同じですだからです。
消費税法の非課税規定の中には、郵便局の切手類の譲渡はあっても、配達業務は含まれていません。
このように、郵便配達には、切手類の購入・貼付が入ってくるから複雑になるのです。
●切手類の消費税処理
郵便の消費税についてまとめると、次のようになります。
・切手類の購入時:消費税非課税
・切手類が貼付された封筒等を郵便局が配達:消費税課税
■切手類の経理処理(仕訳)
●本来の経理
切手類の購入から郵便配達までを仕訳にすると、次のようになります。(2019年10月以降)
(1)切手類購入時(例630円分の切手購入)
貯蔵品 630円(非課税仕入)/ 現預金 630円
(2)ポスト投函時(63円分の切手をはがきに貼付)
通信費 57円(課税仕入10%) / 貯蔵品 63円
仮払消費税 6円
このように、
・切手類を購入した時の消費税は非課税
・郵便局の配達料としては消費税課税取引
というようになります。
●簡便経理
上記のような「本来の経理」はとても面倒ですのは、ほとんどの会社では、次のようにしています。
(1)切手類購入時(例63円切手購入)
通信費 57円(課税仕入) / 現預金 63円
仮払消費税 6円
(2)ポスト投函時
(仕訳なし)
本来の経理でも結果的には、貯蔵品が相殺されますので、簡便処理と同じになります。
ただし、この簡便経理は、切手類の購入が通常使用する程度であることが前提です。
決算直前に、通常使用するよりもかなり多くの切手類を購入すると、決算時までに使用しなかった分は貯蔵品(在庫)として、必要経費から除外しなければなりません。
■消費税が改正される2019年10月1日前後の切手類の経理処理
●本来の経理
(1)切手類購入時
貯蔵品 1000円(非課税仕入)/ 現預金 1000円
(2)ポスト投函が2019年9月30日まで
通信費 57円(課税仕入8%) / 貯蔵品 62円
仮払消費税 5円
(3)ポスト投函が2019年10月1日以降
通信費 57円(課税仕入10%) / 貯蔵品 63円
仮払消費税 6円
本来の経理の場合は、ポスト投函日で消費税率を判断することになります。
●簡便経理
簡便経理をしている場合は、少し複雑になります。
貼付した切手類のすべてが2019年9月30日までに購入したものである場合
(1)切手類購入時(2019年9月30日までに購入)
通信費 926円(課税仕入8%) / 現預金 1000円
仮払消費税 74円
(2)ポスト投函時(10月1日以降。63円切手の場合)
通信費 57円(課税仕入10%) / 通信費 58円(課税仕入8%)
仮払消費税 6円 仮払消費税 5円
2019年9月30日までに購入した切手類と2019年10月1日以降に購入した分が混ざっている場合
(620円が9月30日までに購入したもので、10円が10月1日以降に購入したもの)
(1)切手類購入時(2019年9月30日までに購入)
通信費 926円(課税仕入8%) / 現預金 1000円
仮払消費税 74円
(2)切手類購入時(2019年10月1日以降に購入)
通信費 909円(課税仕入10%) / 現預金 1000円
仮払消費税 91円
(3)ポスト投函時(10月1日以降。。63円切手の場合))
通信費 56円(課税仕入10%) / 通信費 57円(課税仕入8%)
仮払消費税 6円 仮払消費税 5円
10月に購入した切手1円分 (仕訳なし)
でも、こんなことやってられないですよね。
●簡便経理の場合、現実的にすべき経理処理
簡便経理をしている場合、現実的には次の経理がいいのではないでしょうか。
(1)切手類購入時(2019年9月30日までに購入)
通信費 926円(課税仕入8%) / 現預金 1000円
仮払消費税 74円
(2)2019年9月30日までで未使用分の切手類が500円分あった場合
通信費 455円(課税仕入10%) / 通信費 463円(課税仕入8%)
仮払消費税 45円 仮払消費税 37円
9月30日現在で未使用の切手類を8%から10%に一括で変更します。
(3)ポスト投函時(10月1日以降)
(仕訳なし)
【投稿者:税理士 米津晋次】
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