2021年4月からはじまる消費税総額表示義務
2021年03月30日
こんにちは。名古屋市緑区の税理士 米津晋次です。
2021年(令和3年)4月1日から、消費者向けの値札などは本体価格に消費税額を加えた税込金額で表示することが義務づけられます。
これを、「消費税の総額表示義務」といいます。
以前にも総額表示義務となった時期がありましたが、覚えていますか?
それが、消費税率アップ時に値上げでないことを明確化することが可能になるように、税抜表示が認められていたのです。
結局、元に戻ることになったのです。
対象となる取引は消費者向けの商品販売やサーピス提供
消費税の総額表示の義務は、不特定多数の消費者が商品やサービスを選択する際に、支払金額が一目でわかるようにするためのものです。
レジで会計をする際に、消費税分上乗せになってびっくりしないようにということですね。
そのため、消費税の総額表示の義務は、消費者向けの商品販売やサーピス提供が対象になります。
事業者向けの商品販売やサーピス提供は、対象となりません。
消費税総額表示の具体例
正しい総額表示例
消費者向けの値札などは、税込金額で表示することが義務化されます。
しかし、必ずしも税込金額のみを表示することまでは義務づけられていません。
◯ 110円 税込110円 110円(税込)など
今までの税抜金額から値上げをしていないことを明確化するために、税込金額の表示加えて税抜金額を併記する表示することもできます。
◯ 110円(税抜100円) 100円(税込110円)
認められない表示例
一方、次のような表示は税込金額が一目でわからないため認められません。
✕ 100円+税
10%をかけるだけ、消費税を足すだけなどであっても計算が必要で、一目見てわかるとは言えないからです。
また、税込価格、税抜価格を併記する際、税込価格が極端に小さいものや、税込価格が背景色と同系色でわかりにくものもダメです。
税込金額にする場合の端数はどうするのか
税込金額の設定をするときに、税抜金額に消費税率をかけると1円未満の端数が出るときがあります。
そのようなときは、その1円未満の端数について、四捨五入、切り捨てまたは切り上げのいずれの端数処理方法でもかまいません。
値引等の表示する場合
値引き前の価格に対する割引率や割引額を示す表示は,総額表示義務の対象ではありません。
ただし、値引き後の価格を表示する場合は、値引き後の価格表示は総額表示義務の対象となります。
総額表示義務の対象となる表示媒体
消費者に対して行われる価格表示であれば,商品本体による表示(商品に添付又は貼付される値札等),店頭における表示,チラシ広告,新聞・テレビによる広告など,それがどのような表示媒体により行われるものであるかを問わず,総額表示をする義務があります。
(1) 値札,商品陳列棚,店内表示などによる価格の表示
(2) 商品,容器又は包装による価格の表示及びこれらに添付した物による価格の表示
(3) チラシ,パンフレット,商品カタログ,説明書面その他これらに類する物による価格の表示(ダイレクトメール,ファクシミリ等によるものを含む。)
(4) ポスター,看板(プラカード及び建物,電車又は自動車等に記載されたものを含む。),ネオン・サイン,アドバルーンその他これらに類する物による価格の表示
(5) 新聞,雑誌その他の出版物,放送,映写又は電光による価格の表示
(6) 情報処理の用に供する機器による価格の表示(インターネット,電子メール等によるものを含む。)
なお、例えば実演販売やラジオの広告など口頭による場合は対象外です。
ただし、対象外といっても、消費者が税抜金額を税込金額と勘違いするとクレームにつながるため、税込か税抜かをはっきり言うべきでしょう。
総額表示義務のその他の疑問点
レジのレシートを変えなければいけないのか?
総額表示は、消費者が商品やサービスを選ぶ際、支払金額が一目でわかるようにするためのものです。
したがって、消費者が購入を決めてレジで代金を支払った際に渡すレシートや領収書の記戴自体は、基本的に現状から変える必要はありません。
すでに税抜金額が表示されている商品はどうすべきか
商品にすでに税抜金額が表示されていても、棚札などで税込金額を表示しておけば。商品ごとの値札を張り替える必要はありません。
インターネット販売で発送商品の納品書に価格表示が税抜の場合は?
インターネット販売でも、ウェブサイト上の表示を税込金額にすれば、発送する商品自体に税抜金額が表示されていても問題ありません。
看板などはどうすべきか
看板や建物に直接記載されているような場合は、対応に時間もお金もかかります。
税抜金額の部分だけに税込金額のシールを上から貼ったり、もしくは税抜金額の部分を消したりするなどの対応をすべきでしょう。
税抜金額表示のカタログの対応は?
税抜金額表示のカタログなども、税込金額の価格表を挟み込めば、引き続き使うことができます。
事業者相手の小売の場合は?
事業者相手に、業務で使う商品やサービスを販売することがあります。
このような事業者に対するものは、たとえ店舗などでの小売販売でも総額表示義務の対象とはなりません。
まれに消費者が買いに来るとしても、税抜金額で表示していても問題ありません。
しかし、事業者向けと考えられる大容量の商品を販売しており実際に事業者か多く利用しているとしても、消費者向けにもチラシを配布して集客しているような楊合は、不特定多数の消費者へ販売しているため、総額表示義務の対象となります。
テイクアウトとイートインがある場合は?
テイクアウトとイートインでは消費税率が違います。
テイクアウトは8%、イートインは10%ですね。
したがって、両方のケ−スが想定される場合には、一つの商品に対して原則テイクアウトとイートインの2つの税込金碩の表示が必要となります。
(例)コーヒー330円(テイクアウト324円)
ただし、例えばテイクアウトの税込金額だけを表示して、イートインの場合には金額か異なる旨を店内に掲示することも認められます。
これは、イートインの場合の金額をあえて表示していないと考えられ、総額表示の対象外になるからです。
お客様ごとに作成する見積書も税込表示が必要か?
しかし、消費者向けの表示であっても、事前に交付する見積書などお客様ごとに作成する書類については、税抜金額のみでもOKです。
不特定多数の消費者に対するものではないからです。
ただ、ウェブサイトなどに見積書例などを掲載する場合は、不特定多数の消費者へ表示するものになるため、総額表示の対象となります。
価格を表示しないことや時価の表示は認められるのか?
商品価格を表示しないことや、時価とだけ表示することは、そもそも価格か表示されないことから、総額表示義務の対象外となり、今までどおりで問題ありません。
【投稿者:税理士 米津晋次】
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