すべての事業者に影響!電子データの保存方法が来年1月より変わります
2021年11月22日
こんにちは。名古屋市緑区有松の税理士 米津晋次です。
2022年(令和4年)1月に、改正電子帳簿保存法が施行されます。
→令和3年度改正 電子帳簿保存法(国税庁)
これは、これまで紙で保存されることが義務付けられていた税金関係の書類について電子化を促進する目的による改正です。
電子帳簿なんて関係ない・・・という事業者にも今回の改正は影響があります。
それは、すべての事業者は、
■■ 電子データで受け取った取引情報は紙で保存するのではなく ■■
■■ 一定条件を満たした電子で保存しなければならない ■■
ということになるからです。
→2年猶予になりました。(令和5年(2023年)12月末まで)
電子データによる保存が間に合わない事業者について国税庁は、保存すべき電子データを書面に出力して保存し、税務調査等の際に提示又は提出ができるようにしておいていただければ差し支えないとしています。
【電子データで届いたものは電子で保存】
最近は、相手先から請求書や納品書、領収書などが電子データで送られることが増えているのではないでしょうか。
通信販売で購入した場合でも、商品には紙の納品書が同封されず、メールしかこない場合や、領収書をWeb画面で表示するものが多くなっています。
つまり、楽天で購入した領収書は、これまではプリントアウトして保管すればOKでしたが、2022年1月以降は、電子データとして保存をしなくてはならなくなるのです。
それも一定条件を満たした状態での電子保存が必要になります。
もし、適切に保管していないと、実務上はともかく、法律上は青色申告の取り消しも可能になります。
これは自社の希望の有無にかかわらず、すべての事業者に共通するものです。
【電子データの保存条件】
電子データとして受け取ったのだから、それをどこかに何らかの形式のファイルとして保存しておけばいいのではないか?
そう思うかもしれません。
しかし、やっかいなことに、この法律では「保存要件」が定められています。
<検索機能の確保>
「検索機能の確保」の観点から、次の3つの要件を求めています。
・日付、金額、取引先の3つの項目で検索できること
・日付、金額は範囲を指定して検索できること
・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること
たとえば、PDF形式のデータ中に記されたものは、検索ができない場合が多いですし、
検索ができる場合でも、「1万円以上の領収書を表示」というような範囲指定での検索は無理です。
<真実性の確保>
「真実性の確保」はどのようにすればいいのでしょうか。
1つ目の方法は「データの訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備する」というものです。
国税庁では、この「事務処理規程」のひな形を用意しています。
→電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(国税庁)
2つ目の方法は、「データの訂正削除を行なった場合にその記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムを利用する」ことです。
この改正に対応したクラウドサービスが複数ありますので、それを利用することです。
3つ目の方法として、「タイムスタンプを付与する」方法もあります。
しかし、タイムスタンプの利用には費用が発生します。
利用するサービスによって異なりますが、アカウント発行などの導入費用、ほかに毎月発生する利用料がかかるのが一般的です。
したがって、中小企業がタイムスタンプで真実性の確保をするのは困難でしょう。
【対応方法】
この電子帳簿保存法改正への対応方法としては、次の3とおりが考えられます。
<1、検索できるようなファイル名で保存する>
このように、すべての事業者は、法改正される1月までに何らかの対応を求められることになります。
実務上の対処法としては、次の方法が考えられます。
Excelなどに日付と取引先と金額を記入し、それを索引としてファイル名が分かるようにする方法です。
また、ファイル名を、「日付−取引先−金額」といった命名ルールに従って変更し、保存しておくという方法も考えられます。
この方法の場合には「データの訂正削除の防止に関する事務処理規程を整備する」ことが必要です。
書類を扱う担当者が少人数で、運用が徹底できる場合は、この方法がいいでしょう。
(引用:国税庁)
<2、紙に戻す>
時代に逆行することになりますが、電子データから紙に戻す方法です。
取引先によっては応じてくれるところもあるかもしれません。
有料なら紙で発行するところもあるかもしれません。
紙で届いたものなら、従来通りその用紙を保存するだけでOKです。
すべての電子データを紙に戻すことは不可能だと思いますので、この方法だけでの対処はできないでしょう。
<3、クラウドサービスを利用する>
書類を扱う担当者が一定数以上いて、運用の徹底が難しい場合や、
手間をかけない対処法としては、電子データを自動で管理してくれるクラウドサービスを利用することです。
この電子帳簿保存法改正を受けて、これに対応するサービスが出てきましたので、いくつかご紹介しましょう。
※皆様自身の責任で選択してください。弊所で責任を負うことはできません。
■マネーフォワードの「クラウドBox」
まずおすすめするのは、クラウド会計でご紹介しているマネーフォワードの「クラウドBox」。
→クラウドBox
利用料は無料で、容量・利用人数の無制限ですので、現在マネーフォワードクラウド会計等を利用している事業者はこちらを選択するのがいいでしょう。
弊所もこのサービスを利用する予定です。
うれしいことに、クラウド会計等のマネーフォワードのシステムを利用していない事業者も無料で利用可能なようです。
マネーフォワード社のシステムは、弊所では6年以上使用していますが、信頼のおける会社だと思います。
■deepworkの「invox電子帳簿保存」
請求書受取サービス「invox」を提供しているdeepworkも「invox電子帳簿保存」を提供開始しています。
→invox電子帳簿保存
料金は、初期費用無料で、オペレータではなく自身でデータを入力するミニマムプランなら月額1980円。
オペレータに任せるベーシックプランは月額9800円となっています。
■SBIビジネス・ソリューションズの「経理Bank」
経費精算システムを提供しているSBIビジネス・ソリューションズの「経理Bank」です。
→経理Bank
初期費用無料で、基本料金3000円(10ユーザー分)となっています。
<クラウドサービス利用の注意点>
クラウドサービスを利用していて、サービスの利用を止めたり、ほかのサービスへ移行する可能性もあります。
保存期限が経過するまでそのサービスの利用をやめることができません。
また、ほかのサービスへ移行する場合も移行前の電子データは保存期限まで移行前のサービスを利用することになります。
それから、企業が倒産したりサービスをやめてしまうと、保存要件等を満たさなくなってしまいますので、サービスの選択は慎重に行ってください。
なお、電子保存の条件を満たした上で、紙に出力して保存することはもちろん問題ありません。
ただし、紙に保存してあるからといって、元が電子データの場合は法人税法、所得税法上保存してあることにはなりません。
【投稿者:税理士 米津晋次】
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