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2018年10月12日

海外の口座情報が国税庁に筒抜けになった?

2018年10月12日
ちょっと前であれば、日本人が持つ海外の銀行口座の情報は、国税庁などの日本の税務当局にはわからない、といわれていました。

しかし、2018年9月末から、CRS制度がスタートすることにより、日本人が持つ海外の銀行口座の情報は、日本の税務当局が捕捉することができるようになりました。


海外口座は国税には知られにくかった




これまでは、日本人が海外にもつ財産についての所得は、たとえ申告が漏れていても日本の税務当局にはなかなかわかりませんでした。

海外口座や海外資産に関する情報がなかなか入手できなかったことがその一番の原因です。




この傾向は、日本だけではありません。各国の税務当局も同じ悩みを抱えていました。

富裕層の中には、さらにいわゆるタックスヘイブン(租税回避地)呼ばれる国などを経由させることで、資産やお金の流れを捕捉されにくくするということを行なっている人もいると言われてきました。


2018年9月から日本でもCRS制度がスタート



海外口座情報がわからないという同じ悩みをもつ各国の税務当局は、お互いに預金口座情報を交換する「CRS(共通報告基準)」制度という仕組みを作りました。

それぞれの国の金融機関に開設された相手の国の者の口座情報を、年一回自動的に交換するものです。



たとえば、日本に開設されたイギリス人が作った口座情報を日本からイギリスの税務当局に年一回送り、イギリスに開設された日本人の口座情報をイギリスが日本の税務当局に年一回送るという具合です。

この情報交換が、このCRS制度に加盟したすべての国の間で行われ始めました。

日本は、2018年9月末までに、第1回の交換を行ったようです。


タックスヘイブンも加盟



このCRS制度には、主要国だけでなく、タックスヘイブン(租税回避地)とされてきた次の国なども参加しています。

たとえば、バージン諸島、ケイマン諸島、パナマ、シンガポール、香港などです。



海外での資産隠しや所得隠しが発見される?



このCRS制度により、今までのように、相手国にいちいち個別に情報の請求をする事なく、定期的に最新の口座情報が送られてくるのです。

預金、証券、保険などの金融口座の名義、住所、残高、利子、配当の年間受取額などの情報です。



その結果、これまで税務当局が気づいていなかった海外の隠し資産や、隠し所得が発見されやすくなったのです。

つまり、自分の資産が世界のほぼどこにあっても、税務当局に捕捉されるようになったのです。


海外での所得も日本で申告が必要



日本人(居住者)は、日本を含めたどの国における所得も、その国における申告だけでなく、日本でも申告しなければなりません。

たとえば、アメリカで所有する不動産を売却して利益が出たときには、アメリカでの申告が必要なだけでなく、日本でも申告が必要です。


外国税額控除で二重課税に対応



外国でも申告し、日本でも申告するというのでは、外国で払った税金と、日本で払った税金と二重課税になるのではないかと思いますね。

そこは、税制も考えています。

「外国税額控除」といって、日本での申告時に二重課税の調整のために、一定額を税金から引く制度が設けられています。


確定申告で外国税額控除を適用します。




追加:55万件の海外口座情報を入手



2018年10月15日の日本経済新聞の記事によると、国税庁は約50カ国・地域の金融機関にある日本人の口座情報約40万件を入手したそうです。

→その後国税庁が9月に行われた初回の情報交換で、64の国・地域から、日本人が現地に持つ口座55万705件の条を得たと発表しました。

地域別では、アジア・大洋州(太平洋上の国家など)が29万件超、欧米・NIS諸国(旧ソビエト圏)が20万件超となっています。

すごい数ですね。


まとめ



まだCRS制度に加盟していない国もあるものの、この制度によって海外口座を税務当局がほぼ捕捉できるようになりました。

これで、「課税逃れのために海外口座開設する」というスキームが通用した時代は、まもなく終焉を迎えるのてはないでしょうか。

もし、海外で所得が発生した場合には、日本でも正しく申告をしましょう。





【投稿者:税理士 米津晋次
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