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2019年01月17日
2019年度与党税制改正大綱(その他の相続税関係)
2019年01月17日
2018年12月14日に自民党、公明党による2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱が発表されました。例年この時期に発表され、通常はこのまま2019年3月までには国会で承認され成立し、2019年4月から施行となります。
今回は、2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、いままで説明した以外の相続税関係の改正点について確認しましょう。
2019年度与党税制改正大綱|その他の相続税に関する改正
2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、個人事業者事業承継税制以外の相続税に関する主な改正点は、次のものです。
配偶者居住権等の相続税評価の方法
改正民法(相続法)で「配偶者居住権」が創設されたことに伴い、その評価方法が定められました。
特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例の見直し
特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例について、特定事業用宅地等の範囲から「相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等」が除外されることになります。
成人年齢引き下げによる相続税の措置
2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることに伴った相続税の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられます。
配偶者居住権等の相続税評価の方法
配偶者居住権と負担付き所有権の分離
改正民法(相続法)では、夫または妻の死後の配偶者の生活を保障するため、「配偶者居住権」という制度が創設されました。
その結果、改正後は居住していた建物を(1)配偶者居住権と(2)負担付き所有権に分けて別々の相続人が相続できるようになります。
配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、終身(又は一定期間)居住建物を無償で使用できる権利のことをいいます。
負担付き所有権とは
負担付き所有権とは、居住権という負担が付いていて、自由に使用できない所有権のことをいいます。
配偶者居住権等の評価
これを受けて、税制改正大綱では、
・建物の(1)配偶者居住権、(2)負担付き所有権
・その敷地の(3)利用権、(4)所有権
の相続税評価の方法が明らかにしました。
配偶者居住権を相続した場合には、建物だけでなく、その敷地を利用する権利も評価して相続税の課税対象とされます。
配偶者居住権の評価
・建物の時価 − 建物の時価 ×(残存耐用年数 − 存続年数)÷ 残存耐用年数 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
※1 残存耐用年数 … 居住建物の法定耐用年数に1.5を乗じて計算した年数から居住建物の築後経過年数を控除した年数
※2 存続年数 … 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める年数
a. 終身の配偶者居住権の場合 … 配偶者の平均余命年数
b. 一定期間の配偶者居住権の場合 … 配偶者居住権の存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限)
配偶者居住権が設定された建物の所有権(負担付き所有権)の評価
・建物の時価 − 配偶者居住権の価額
配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利の評価
土地等の時価 − 土地等の時価 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
居住建物の敷地の所有権等の評価
土地等の時価 − 敷地の利用に関する権利の価額
特別寄与料に対する課税の方法
改正民法(相続法)では、無償で被相続人の介護・看護等に貢献してきた相続人以外の親族(特別寄与者)について、相続が開始した後、相続人に対し「特別寄与料」として金銭を請求する権利を認めました。
特別寄与料を受け取った側・支払った側に対する課税方法は、基本的には遺産の代償分割を行った場合の取扱いと同じです。
特別寄与者側の取扱い
特別寄与者に支払われる特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与者がその特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税が課税されます。
これにより新たに相続税の申告義務が生じた場合には、特別寄与料の額が確定したことを知った日から10ヵ月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。
特別寄与料を支払った相続人側の取扱い
相続人が特別寄与者に対して支払った特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価格から控除されます。
なお、既に相続税の申告が済んでいる場合には、更正の請求を行うことが可能です。
特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例の見直し
相続開始前3年以内に事業供用された宅地は評価減の対象外に
被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた宅地等を取得した相続人が、相続税の申告期限までその宅地等を保有し事業を継続した場合には、相続税の計算上、その宅地等の評価額を最大400uまで80%減額できる特例があります。
今回の改正によって、この特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例について、特定事業用宅地等の範囲から「相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等」が除外されることになります。
ただし、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産(事業用建物など)の価額がその宅地等の相続時の価額の15%以上である場合には、たとえ相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等であっても特例の対象となります。
適用時期
特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例の見直し改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に相続等により取得する宅地等について適用されます。
ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、この「3年ルール」の対象外となります。
たとえば、2018年12月に被相続人が事業の用に供した宅地について、2019年4月に発生した相続により相続人がその宅地を取得し事業を継続した場合には、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地ではあるものの、特定事業用宅地等として小規模宅地等の評価減が認められます。
成人年齢引き下げによる相続税の措置
2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることに伴って、2022年4月1日以後の相続に対する相続税の次の年齢要件について、20歳以上から18歳以上に引き下げられます。
18歳未満(現行:20歳未満)に引き下げられるもの
現行の「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げられる相続税の規定は次のものです。
・相続税の未成年者税額控除の対象となる相続人の年齢
参考:相続税の未成年者税額控除の概要
相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引く規定です。
その未成年者控除の額は、
・10万円×満20歳になるまでの年数
となっています。
したがって、10歳なら10万円×10年で100万円となります。
なお、1年未満の期間があるときは切り上げて計算します。
18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げられるもの
現行の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる相続税の規定は次のものです。
・相続時精算課税制度(特例を含む)の対象となる受贈者の年齢
参考:相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税とは、
(1)祖父母や親から20歳以上の子や孫へ行う生前贈与については、2500万円まで非課税にするなど通常の贈与に比べて贈与税を軽くする
と同時に
(2)相続の時には、その贈与した財産も含めて相続税を計算し、贈与時に支払った贈与税を相続税から差し引いて精算する
という制度です。
高齢化が進む中、高齢者が所有する財産を若い世代に早めに移転させることを狙ったものです。
■2019年度与党税制改正大綱関係記事
・2019年度与党税制改正大綱の概要
・2019年度与党税制改正大綱(贈与税非課税関係)
・2019年度与党税制改正大綱(中小企業関係)
・2019年度与党税制改正大綱(所得税関係)
税理士 米津晋次】
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