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2019年01月

2019年度与党税制改正大綱(所得税関係)

2019年01月10日
2018年12月14日に自民党、公明党による2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱が発表されました。

例年この時期に発表され、通常はこのまま2019年3月までには国会で承認され成立し、2019年4月から施行となります。

今回は、2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、所得税に関する改正点について確認しましょう。


2019年度与党税制改正大綱|所得税に関する改正


2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、所得税に関する主な改正点は、次のものです。

住宅ローン控除の拡充


消費税率10%で住宅を取得し、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合には、住宅ローン控除の控除期間が10年から13年に延長されます。

空き家に係る譲渡所得の3,000万円控除特例の改正


相続により取得した空き家を売却した場合に、その譲渡所得(売却益)から最大3,000万円を控除することができる特例があります。
この空き家に係る譲渡所得の3,000万円控除特例制度について、適用期限の延長と適用対象の拡大がされます。

NISA・ジュニアNISAの年齢要件の見直し


成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることに伴い、NISA口座(非課税口座)を開設できる年齢要件が18歳以上に引き下げられます。

個人が年末に保有する仮想通貨の評価


個人が年末において仮想通貨を保有する場合のその保有する仮想通貨の価額(評価額)について期末評価をすることになります。


2019年度与党税制改正大綱|住宅ローン控除の拡充


住宅ローン控除とは


いわゆる住宅ローン控除( 正式には「住宅借入金等特別控除」といいます)とは、個人が住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合などに、入居した年以降の所得税(所得税から引ききれない場合には住民税の一部)から住宅ローンの年末残高を基に計算した一定金額が控除される制度です。

現行の住宅ローン控除制度


現行の住宅ローン控除制度では、消費税率8%で住宅を取得した場合、年間で最大40万円(認定住宅の場合は50万円)、10年間の合計で最大400万円(認定住宅の場合は500万円)が所得税や住民税から控除されます。


<2014年1月1日から2021年12月31日までに入居> ※消費税率8%で取得

認定住宅の場合


・控除期間:10年
・各年の控除限度額:ローン年末残高(最大5,000万円)× 1%

認定住宅以外の場合


・控除期間:10年
・各年の控除限度額:ローン年末残高(最大4,000万円)× 1%


住宅ローン控除制度の改正


消費税率10%で住宅を取得し、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合には、控除期間が10年から13年に延長されます。

その場合、11年目以降は「住宅ローン年末残高の1%」と「建物購入価格(税抜)の2%を3等分した額」のいずれか少ない方の金額が控除されます。

つまり、11年目から13年目までの3年間合計で建物購入価格の2%(=消費増税分)を上限として減税される仕組みです。

<2019年10月1日から2020年12月31日までに入居> ※消費税率10%で取得

認定住宅の場合


・控除期間:13年
・各年の控除限度額 ?1年目〜10年目:ローン年末残高(最大5,000万円)× 1%
・11年目〜13年目:次のうちいずれか少ない金額
  a.ローン年末残高(最大5,000万円)× 1%
  b.建物購入価格(税抜・最大5,000万円)× 2% ÷ 3年

認定住宅以外の場合


・控除期間:13年
・各年の控除限度額 ?1年目〜10年目:ローン年末残高(最大4,000万円)× 1%
・11年目〜13年目:次のうちいずれか少ない金額
  a.ローン年末残高(最大4,000万円)× 1%
  b.建物購入価格(税抜・最大4,000万円)× 2% ÷ 3年


2019年度与党税制改正大綱|空き家に係る譲渡所得の3,000万円控除特例の改正


空き家に係る譲渡所得の3,000万円控除特例の概要


空き家に係る譲渡所得の3,000万円控除特例とは、一人暮らしをしていた被相続人から相続により取得した自宅(空き家)を2016年(平成28年)4月1日から2019年(平成31年)12月31日までの間に売却した場合で、一定の要件に当てはまるときは、空き家に係る譲渡所得から最大3,000万円を控除することができる制度です。

特例の対象となるのは、
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋(耐震リフォーム済み)を売却するか、その家屋とともに敷地を売却した場合
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋を取壊し、敷地のみを売却した場合
のいずれかのケースです。

改正点1:適用期限が4年延長に



まず、2019年(平成31年)12月31日が期限とされていたこの特例について、適用期限が4年延長されます。
つまり、2023年12月31日までに行った空き家の譲渡が対象となります。

改正点2:老人ホームに入所していた場合も対象に


現行制度において、特例の対象となる空き家は、相続開始の直前まで被相続人の居住の用に供されていた家屋に限られています。
このため、被相続人が要介護状態となり老人ホーム等へ入所したまま亡くなった場合には、たとえ被相続人の自宅が空き家になっていてもこの特例を適用することはできない問題点がありました。

そこで今回の改正により、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合でも、次に掲げる要件を満たすときは、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとしてこの特例を適用できるようになります。
(1)被相続人が要介護認定等を受け、かつ、相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していたこと。
(2)被相続人が老人ホーム等に入所した時から相続開始の直前まで、空き家について被相続人による一定の使用がなされ、かつ、事業の用・貸付の用・被相続人以外の居住の用に供されていたことがないこと。

適用時期


この空き家に係る譲渡所得の3,000万円控除特例の改正は、2019年(平成31年)4月1日以降に行う空き家の譲渡について適用されます。


2019年度与党税制改正大綱|NISA・ジュニアNISAの年齢要件の見直し


成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることに伴った改正です。

現行のNISA・ジュニアNISAの年齢要件


NISA口座(非課税口座)を開設できる年齢要件が「その年1月1日において20歳以上」になっています。

NISA・ジュニアNISAの年齢要件の引き下げ


2022年4月1日より成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることに伴い、NISA口座(非課税口座)を開設できる年齢要件が「その年1月1日において18歳以上」に引き下げられます。


2019年度与党税制改正大綱|個人保有する仮想通貨の評価


年末に仮想通貨の保有している場合の評価について、時価評価となります。

現行制度では、年末時価評価はしない


現行制度では、年末に保有している仮想通貨については、時価評価は行いません。
したがって、含み益または含み損が発生する制度になっています。


改正により年末時価評価へ


今回の税制改正により、個人が年末に仮想通貨を保有する場合、期末において保有する仮想通貨の価額(評価額)は、次のいずれかの評価方法による算出した金額になります。
・移動平均法
・総平均法

移動平均法


仮想通貨の購入や売却の都度、「保有している仮想通貨の購入価額の累計/保有している仮想通貨の数」で取得
価額を計算する複雑な方法です。

総平均法


1年間の購入した仮想通貨の平均単価で計算する簡単な方法です。


■2019年度与党税制改正大綱関係記事
・2019年度与党税制改正大綱の概要
・2019年度与党税制改正大綱(贈与税非課税関係)
・2019年度与党税制改正大綱(中小企業関係)
・2019年度与党税制改正大綱(個人事業者事業承継税制)
・2019年度与党税制改正大綱(その他の相続税関係)



【投稿者:税理士 米津晋次
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2019年度与党税制改正大綱(その他の相続税関係)

2019年01月17日
2018年12月14日に自民党、公明党による2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱が発表されました。

例年この時期に発表され、通常はこのまま2019年3月までには国会で承認され成立し、2019年4月から施行となります。

今回は、2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、いままで説明した以外の相続税関係の改正点について確認しましょう。


2019年度与党税制改正大綱|その他の相続税に関する改正


2019年度(平成31年度)与党税制改正大綱の内容のうち、個人事業者事業承継税制以外の相続税に関する主な改正点は、次のものです。

配偶者居住権等の相続税評価の方法


改正民法(相続法)で「配偶者居住権」が創設されたことに伴い、その評価方法が定められました。

特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例の見直し


特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例について、特定事業用宅地等の範囲から「相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等」が除外されることになります。

成人年齢引き下げによる相続税の措置


2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることに伴った相続税の年齢要件が20歳以上から18歳以上に引き下げられます。


配偶者居住権等の相続税評価の方法


配偶者居住権と負担付き所有権の分離


改正民法(相続法)では、夫または妻の死後の配偶者の生活を保障するため、「配偶者居住権」という制度が創設されました。
その結果、改正後は居住していた建物を(1)配偶者居住権と(2)負担付き所有権に分けて別々の相続人が相続できるようになります。

配偶者居住権とは


配偶者居住権とは、終身(又は一定期間)居住建物を無償で使用できる権利のことをいいます。

負担付き所有権とは


負担付き所有権とは、居住権という負担が付いていて、自由に使用できない所有権のことをいいます。

配偶者居住権等の評価


これを受けて、税制改正大綱では、
・建物の(1)配偶者居住権、(2)負担付き所有権
・その敷地の(3)利用権、(4)所有権
の相続税評価の方法が明らかにしました。

配偶者居住権を相続した場合には、建物だけでなく、その敷地を利用する権利も評価して相続税の課税対象とされます。

配偶者居住権の評価


・建物の時価 − 建物の時価 ×(残存耐用年数 − 存続年数)÷ 残存耐用年数 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

※1 残存耐用年数 … 居住建物の法定耐用年数に1.5を乗じて計算した年数から居住建物の築後経過年数を控除した年数
※2 存続年数 … 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める年数
  a. 終身の配偶者居住権の場合 … 配偶者の平均余命年数
  b. 一定期間の配偶者居住権の場合 … 配偶者居住権の存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限)

配偶者居住権が設定された建物の所有権(負担付き所有権)の評価


・建物の時価 − 配偶者居住権の価額

配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利の評価



土地等の時価 − 土地等の時価 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

居住建物の敷地の所有権等の評価



土地等の時価 − 敷地の利用に関する権利の価額


特別寄与料に対する課税の方法


改正民法(相続法)では、無償で被相続人の介護・看護等に貢献してきた相続人以外の親族(特別寄与者)について、相続が開始した後、相続人に対し「特別寄与料」として金銭を請求する権利を認めました。
特別寄与料を受け取った側・支払った側に対する課税方法は、基本的には遺産の代償分割を行った場合の取扱いと同じです。

特別寄与者側の取扱い


特別寄与者に支払われる特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与者がその特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税が課税されます。
これにより新たに相続税の申告義務が生じた場合には、特別寄与料の額が確定したことを知った日から10ヵ月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。

特別寄与料を支払った相続人側の取扱い


相続人が特別寄与者に対して支払った特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価格から控除されます。
なお、既に相続税の申告が済んでいる場合には、更正の請求を行うことが可能です。


特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例の見直し


相続開始前3年以内に事業供用された宅地は評価減の対象外に


被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた宅地等を取得した相続人が、相続税の申告期限までその宅地等を保有し事業を継続した場合には、相続税の計算上、その宅地等の評価額を最大400uまで80%減額できる特例があります。
今回の改正によって、この特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例について、特定事業用宅地等の範囲から「相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等」が除外されることになります。

ただし、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産(事業用建物など)の価額がその宅地等の相続時の価額の15%以上である場合には、たとえ相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等であっても特例の対象となります。

適用時期


特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の評価減の特例の見直し改正は、2019年(平成31年)4月1日以後に相続等により取得する宅地等について適用されます。
ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、この「3年ルール」の対象外となります。

たとえば、2018年12月に被相続人が事業の用に供した宅地について、2019年4月に発生した相続により相続人がその宅地を取得し事業を継続した場合には、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地ではあるものの、特定事業用宅地等として小規模宅地等の評価減が認められます。


成人年齢引き下げによる相続税の措置


2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることに伴って、2022年4月1日以後の相続に対する相続税の次の年齢要件について、20歳以上から18歳以上に引き下げられます。

18歳未満(現行:20歳未満)に引き下げられるもの


現行の「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げられる相続税の規定は次のものです。
・相続税の未成年者税額控除の対象となる相続人の年齢

参考:相続税の未成年者税額控除の概要


相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引く規定です。

その未成年者控除の額は、
・10万円×満20歳になるまでの年数
となっています。
したがって、10歳なら10万円×10年で100万円となります。

なお、1年未満の期間があるときは切り上げて計算します。

18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げられるもの


現行の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる相続税の規定は次のものです。
・相続時精算課税制度(特例を含む)の対象となる受贈者の年齢

参考:相続時精算課税制度の概要


相続時精算課税とは、
(1)祖父母や親から20歳以上の子や孫へ行う生前贈与については、2500万円まで非課税にするなど通常の贈与に比べて贈与税を軽くする
と同時に
(2)相続の時には、その贈与した財産も含めて相続税を計算し、贈与時に支払った贈与税を相続税から差し引いて精算する
という制度です。
高齢化が進む中、高齢者が所有する財産を若い世代に早めに移転させることを狙ったものです。


■2019年度与党税制改正大綱関係記事
・2019年度与党税制改正大綱の概要
・2019年度与党税制改正大綱(贈与税非課税関係)
・2019年度与党税制改正大綱(中小企業関係)
・2019年度与党税制改正大綱(所得税関係)
税理士 米津晋次
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