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2022年04月06日
改正税理士法が2022年3月22日に成立
2022年04月06日
2022年3月22日の参院本会議で、税理士法の改正を含む「所得税法等の一部を改正する法律案」が賛成多数で可決され成立しました。
今回の税理士法改正では、コロナ後の新しい社会を見据え、税理士の業務環境や納税環境の電子化、受験資格要件の見直しなど、税理士を取り巻く状況の変化に対応した改正になりました。
今回の税理士法の改正点からいくつかについて説明します。
税理士事務所の判定基準の見直し
税理士法40条1項では、税理士は「事務所」で勤務をし、その事務所とは「外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定する」と定めています。
この規定により、これまで税理士は登録事務所以外の場所での業務ができず、コロナ禍で急増した在宅動務(リモートワーク)も違法ではないかと指摘を受けてきました。
もともとこの規定は、税理士業務が納税義務の適正な実現に資するという社会公共性の高いものであるために設けられた措置です。
しかし、税理士業務のICT化や在宅勤務(リモートワーク)を含めた多様化する働き方に対応するために改正を要望していました。
そこで今回の税理法改正では、税理士事務所に該当するかどうかの判定について、「看板等物理的な表示やホームページへの表示のほか、契約書等に記載すること」(外部表示)によって判断し、設備又は使用人の有無等の物理的な事実により行わないこととする等の運用上の対応を行うことが盛り込まれました。
税理士事務所の使用人の監督義務についても、ICTを活用した対面以外の方法も可能であるとされています。
これにより、在宅勤務やサテライトオフィスを活用した働き方が可能になりました。
税理士試験の受験資格
税理士試験の受験資格について、次の緩和策が盛り込まれる見直しが行われました。
(1)会計学に属する科目(簿記論、財務諸表論)の受験資格を不要にする
(2)大学などで一定の科目を修めた者が得られる受験資格に、これまでの法律学と経済学(に属する科目)に加えて、社会学(に属する科目)を追加する
活動領域の拡大により、税理士には広く社会に関する基礎的素養が求められていることを踏まえ、履修を要する科目の範囲(履修科目要件)を「法律学・経済学」から「社会
科学(に属する科目)」に拡大されました。
税理士と同じく国家資格である公認会計士や弁理士、司法書士、行政書士には、受験資格要件はありません。これが税理士試験受験者数が最近減少している要因のひとつでしょう。
税理士を目指す人の範囲拡大という点で、受験という土俵に上がる前に受験資格による線引を行うことは問題です。税理士になりたいという夢を持っている人に、公正な試験を実施することの方が重要でしょう。その意味で、受験資格が緩和されたものの、今回の改正ではまだまだ不充分ではないでしょうか。
税理士法人の業務範囲の拡充
税理士法人が行うことができる業務として、以下の業務が追加されました。
(1)租税に関する教育その他知識の普及及び啓発の業務
(2)後見人等の地位に就き、他人の法律行為について代理を行う業務等
なお、「租税に関する教育その他知識の普及及び啓発の業務」には租税教育のほか、租税に関する知識の講演会の開催、出版物の刊行に関するものが含まれる予定です。
懲戒逃れへの罰則を強化
これまでは、調査と処分は現職の税理士にしか行えなかったため、近年、不正に関与した税理士が廃業することで、当局による調査と処分を逃れるケースが相次いだことが問題になっていました。
今回の改正で、廃業した元税理士も処分対象とできるようになりました。また、懲戒逃れを図る税理士等への対応として「懲戒処分を受けるべきであったことの決定」処分が創設されることに伴い、その実効性を確保するため、国税庁長官は、税理士であった者に対し在職中の税理士法違反に関する調査権限を行使できることとなりました。
税理士法懲戒処分等の時効の創設
税理士法上の不正行為については、これまで除斥期間(時効)が存在しませんでした。今回の改正では、日税連が「懲戒処分等は信用に関わる重大な問題であり、税理士による反論手段を確保するため」として、税理士法違反行為から10年が経過した後は処分ができないようにすべきとの要望が全面的に受け入れられました。
なお、除斥期間を10年とする理由は、脱税相談・不真正税務書類の作成といった税理士法違反行為・事実については税務調査時に把握されるものが多く、課税処分の除斥期間が7年であることと、税理士法上の調査や懲戒処分手続の期間としておおよそ3年程度必要であることを踏まえ、税理士法違反行為後「10年」としています。
ニセ税理士に対する調査権限の強化は見送り
昨年12月に閣議決定した大綱に盛り込まれていた「ニセ税理士」に対する質問検査権の整備については、改正を見送りとなりました。
日税連は「法案には盛り込まれておらず、引き続き検討される見込み」としています。
【投稿者:税理士 米津晋次】
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