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2022年12月27日

2023年度税制改正大綱の主なポイントと説明(1)NISAの拡充及び恒久化

2022年12月27日
 
自民党、公明党両党は2022年12月16日、2023年度(令和5年度)与党税制改正大綱を決定しました。

 →令和5年度税制改正大綱(自民党・公明党。PDF形式)
 →令和5年度税制改正の大綱(財務省。PDF形式)
 →令和5年度税制改正の大綱の概要(財務省。PDF形式)


2023年度税制改正大綱の主なポイント



主なポイントは、次のとおりです。

■NISAの拡充及び恒久化


 まずは、岸田首相が掲げる「資産所得倍増プラン」に基づき、貯蓄から投資への流れを促進するNISA(少額投資非課税制度)の年間投資枠を、積立型は3倍の120万円へ、一般型は2倍の240万円に拡大するとともに、非課税期間の恒久化をします。

■超富裕者層の課税強化


 次に、所得が1億円を超えると税負担率が下がるいわゆる「1億円の壁」の是正に向けて、所得が30億円を超える超富裕者層を対象に課税を強化します。

■相続財産に加算する生前贈与の範囲を3年から7年へ延長


 若年層への資産移転を促進するため、生前贈与の相続税加算期間を3年から7年へ拡大します。

■インボイス制度導入と小規模事業者の税負担軽減


 インボイス制度を2023年10月から開始し、それにより負担増が問題になっていた小規模事業者の消費税納税額を、売上消費税の2割に軽減することにします。

■エコカー減税の据え置きと対象車種の絞り込み


 2023年4月末までの「エコカー減税」(自動車重量税の優遇措置)を12月末まで据え置き、減税措置を2026年4月末まで延長しますが、2024年1月以降は段階的に優遇対象の車を絞り込みをします。

■教育資金、結婚・子育て資金贈与の税非課税制度の延長


 2023年3月末までが期限であった教育資金贈与の非課税措置を3年、結婚・子育て資金贈与の非課税措置を2年延長します。


説明(1)NISAの拡充及び恒久化


投資した株式の売却益など金融取引からの利益については、20.315%の税金(所得税・住民税)がかかります。
しかし、それを非課税にするのがNISA(少額投資非課税制度)です。



(画像引用:日本証券業協会)
今回のNISA拡充は、「貯蓄から投資」を促す岸田政権の目玉施策となり、使い勝手が大きく向上します。


■投資上限額の拡大


NISAについては、投資上限額を年360万円に拡大します。

投資信託を運用する「積立NISA」の上限は、現行は年40万円、国内外の上場株式に投資する「一般NISA」の上限は、年120万円です。

それを「積立NISA」は3倍の年120万円へ、「一般NISA」は、「成長投資枠」に衣替えしたうえで2倍の年240万円とします。

さらに、現行は、「積立NISA」か「一般NISA」のどちらか一方しか利用できませんが、今回の改正ではその両方を併用できるようにします。

■生涯投資枠


生涯の投資上限額は1800万円で、うち成長投資枠の上限を1200万円とします。

生涯の投資額は、買付価格で管理し、評価益は含みません。

上限に達しても、運用中の金融商品を売って投資伜が空けば商品を再び購入できます。


■制度の恒久化


投資可能期間は、積立NISAが2042年まで、一般NISAは2023年までとなっていました。

今回の改正では、NISA制度そのものを恒久化します。

また、非課税の保有期間についても、現行の「積立NISA」の20年、「一般NISA」の5年から、それぞれ無期限とします。

■新制度の適用開始年月と対象年齢


この改正は、2024年1月から月から適用します。

また、その対象年齢は18歳以上とします。

■現行NISAでの運用商品はどうなるのか


現行のNISAで運用している商品については、新制度導入以降は分別管理します。

既にNISAを利用している人は、新制度の投資枠をゼロから使えることになります。


つまり、現行NISAで保有していた資産は、2024年以降も現行の非課税期間のまま保有できます。

2023年に投資した場合、一般NISAであれば非課税期間は5年間、つみたてNISAであれば非課税期間は20年間です。

そして、いよいよ2024年からは改正後の新NISAで投資ができるようになります。

非課税期間は無期限で、NISA制度が恒久化されたので期限を気にせず投資ができますね。

■NISA改正のまとめ


今回のNISAの改正で、まず時限立法だった「時間切れ」という時間的制約が取り払われました。
いつNISAを始めても、一定額まで非課税で有利に運用できるようになります。

非課税枠も拡大されます。

これらにより投資の自由度が増しています。
たとえば、高配当の投資先を組み込みことによって、年金補完用途にも使えるでしょう。

一方で、「成長投資枠」となることで自由度が減る面もあり、現行の「ジュニアNISA」の廃止で口座開設対象が18歳以上に制限されます。

■NISAとiDeCoの使い分け方法


NISAと優遇制度のひとつであるiDeCo(個人型確定拠出年金)とは、とのように使い分けるといいのでしょうか。

 →iDeCoってなに?(iDeCo公式サイト)

税金のかかる所得がある人は、掛金が所得から控除されるメリットが大きなiDeCoをNISAより優先的に使う方が有利な場合が多いでしょう。

一方、税金がかかっていない方、少額しかかかっていない方にとっては、iDeCoの掛金控除にはメリットはありません。

また、iDeCoには、資金の引き出しに原則60歳まで不可などの制限もあります。

したがって、そのような所得が少ない方は、iDeCoよりも、解約の制限のないNISAを優先的に利用すると有利な場合が多いでしょう。


【投稿者:税理士 米津晋次
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