2割特例の適用に「不適用届出書」提出が必要な場合がある

2024年01月05日
 
 インボイス制度開始により、免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった事業者には「2割特例」という経過措置制度が設けられています。
 ただし、ある場合には、一定の手続きをしないと「2割特定」を適用できない場合がありますので注意が必要です。

2割特例とは?


 2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者の方を対象に、消費税の納付税額を売上に係る 消費税額の2割とすることができる特例です。



 したがって、基準期間における課税売上高が1000万円を超える事業者の方、資本金1000万円以上の新設法人、調整対象固定資産や高額特定資産を取得して仕入税額控除を行った事業者の方等、インボイス発行事業者の登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合や、課税期間を1カ月又は3カ月に短縮する特例の適用を受ける場合などについては、2割特例の対象とはなりません。

 2割特例の適用に当たっては、事前の届出は必要なく、消費税の申告時に消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記することで適用を受けることができます

 なお、2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となっています。


 → 2割特例の概要(国税庁)

令和5年10月31日付国税庁の周知依頼


 2割特例に関して、国税庁から日本税理士会連合会宛に、「インボイス発行事業者の登録申請書のほか、インボイス制度開始の日(令和5年10月1日)を含む課税期間に係る『消費税課税事業者選択届出書』を提出している場合には、課税時間の末日までに『課税事業者選択不適用届出書』を提出しないと2割特例が適用されなくなるから要注意!!」ということを周知してもらうよう依頼がありました。

何らかの理由で選択していたら再度検討を


 インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になる場合には、インボイス発行事業者の登録申請書を提出すれば、インボイス制度開始の日(令和5年10月1日)からインボイス発行事業者となり、同日から課税事業者となっています。同日からの適用であれば、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要でした。
 しかしながら、何らかの理由(=たとえば、令和5年10月1日より前に設備投資等がありその消費税還付目的があったなど)で、「消費税課税事業者選択届出書」を提出していた場合には、国税庁からの周知にある追加手続きをすべきか否か、再度、納税額のシミュレーションをし直して、対応を確認する必要があります。
 予定通り設備投資等がなされていれば当初の選択通りでよいかもしれませんが、経済事情の悪化等で設備投資が先延ばしされていた場合などには、見積納税額の計算のし直しが必要となるでしょう。

ギリギリまで検討できるが早めに対応を


 通常、消費税の課税選択等の適用申請は、適用を希望する「課税期間の初日の前日までに」とされています。
 しかしながら、経過措置関連では、「課税期間の末日までに」という措置が取られており、今回の「2割特例適用のための『課税事業者選択不適用届出書』の提出も課税期間の末日までに」とされています。
 どちらが得なのか、損をしないのかのシミュレーションをする時間は課税時間の末日までありますが、通信環境システムの不具合などで遅れることのないように、早めに対応した方が良いでしょう。



【投稿者:税理士 米津晋次
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