《コラム》パートさんの扶養条件が変わる?2016年
こんにちは。名古屋の税理士 米津晋次です。
最近お客様からよくいただくお問合せに、
「パートさんの扶養条件が変わったのでしょうか?」
というものがあります。
所得税、住民税については、配偶者控除廃止の議論がありますが、まだ改正は決まっておりません。
変わるのは社会保険の扶養についてです。
扶養に入ることができれば、現状では保険料負担なしで健康保険証が使え、
将来、国民年金と同様の年金を受け取ることができるのが、扶養に入るメリットです。
ところが、2016年10月から社会保険の扶養に入れる条件が変わることが決まっています。
【1、現状:パートさんがご主人の社会保険の扶養に入れる条件】
パートさんが、ご主人の社会保険の扶養に入れるのは、次の要件をすべて満たした場合です。
(1)自分の勤務先で社会保険に加入していない
(2)年間収入が130万円未満であること(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満。協会けんぽの場合)
(1)は当然のこととして、(2)は勘違いしている人が多いです。
この年収は、所得税や住民税のように、1月1日から12月31日の合計額ではありません。
これからの見込みです。
したがって、今後のパート収入が月額108,333円以上である場合には、
今年の1月1日から12月31日の年収が130万円未満になる予定でも社会保険の扶養から外れることになります。
また、この年収には、通勤手当も含めますし、雇用保険の失業等給付や出産手当金なども含まれます。
この点も所得税・住民税との扱いと異なるところです。
【2,2016年10月からはパートさんが扶養に入れる条件ははこのように変わる!】
2016年(平成28年)10月から、上記(1)に影響する改正が決まっています。
次の条件を満たせば、原則として自分の勤務先で社会保険に加入することとなります。
・週20時間以上の労働時間
・年収106万円(月収8万8千円)以上
・勤務期間が1年以上の見込み
上記(2)の扶養の認定要件については今のところ変更になっていません。
ということは、
いくらパート収入130万円以下になる見込みであっても、
自分の勤務先で上記の要件をすべて満たしてしまうと、
ご主人の扶養に入るかどうかの前に、自分が社会保険に加入することになるのです。
社会保険に加入するかしないかの選択はできません。強制加入です。
自分が勤務先で社会保険に加入することになれば、当然ご主人の社会保険の扶養には入れません。
【3,年収・月収について】
改正後の社会保険加入の収入要件(年収106万円以上、月収8万8千円以上)は、
扶養要件の年収や月収と少しことなる扱いになっています。
次のものは、年収・月収には含めないこととされているのです。
・臨時に支払われる賃金(結婚手当等)及び1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
・所定時間外労働、所定休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
・最低賃金法において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
扶養の収入要件よりも少し緩和されているということですね。
【4,中小企業の例外】
ただし、この改正には例外があります。
従業員が500人以下の会社には、この改正は適用されません。
社会保険の加入要件は従来どおりですから、
扶養に入れる条件も変更はありません。
会社側にとってみれば、社会保険の加入者が増えれば、負担する社会保険料も増加し、
当然、利益は下がり、資金繰りも苦しくなります。
中小企業の負担を考慮した措置ですね。
【5,扶養から外れそうな場合にはどうするか?】
従業員501人以上の企業にパート勤務していて、社会保険に加入することになり、ご主人の扶養からは抜けなければならなくパート主婦の場合には、どうすればいいのでしょうか。
まず考えていただきたいのが、扶養から外れることが損なこととは限らないということです。
社会保険に加入することで、老後の年金額が増えます。
老後の貧困が問題になっていますので、老後の不安を少なくする意味でも有効です。
また、保障も充実します。
病気等で長期欠勤する場合には、傷病手当金を受けることができますし、
出産の場合には、出産手当金を受け取ることもできます。
育児休業給付を受けることもできます。
障害年金を受給できる障害者の範囲が広いメリットもあります。
扶養に入れば保険料負担なしで将来年金が受けられるという第3号被保険者問題についても議論されており、
今後手が入れられる可能性もあります。
長期的には、扶養内で働くメリットは徐々に小さくなっていく方向でしょう。
【6,それでもご主人の扶養から外れたくない場合】
それでもご主人の社会保険の扶養から外れたくない場合には、次の選択肢が考えられます。
(1)労働時間を減らす
社会保険にどうしても加入したくない場合は、まずは労働時間を週20時間未満に減らすように変更するという方法があります。
当然、収入は減りますし、パート勤務先との交渉も必要です。
逆に、社会保険へ加入することになった場合でも、年収がおよそ125万円以上であれば、手取りは増えることになります。
(2)従業員が500名以下の企業に転職する
従業員500名以下の企業であれば今回の改正は適用になりませんので、社会保険への加入義務はありません。
したがって、そのような企業へ転職する方法も考えられます。
人手不足の企業が多いため、条件を選ばなければ転職先は見つかるでしょうか。
ただし、今の勤務先と同じような条件で働けるかどうかが問題になります。
転職したら、勤務条件が悪かった、とか、人間関係が良くなかったということも考えられます。
家庭により考え方や価値観はそれぞれだと思います。
どうすることが正解だ、とは言えません。
今のうちに、今後のライフサイクルやライフプランについてご主人と相談して決めていただきたいと思います。
【参考:扶養についての参考図書】
この改正には対応しておりませんが、
税金や社会保険の扶養について正しい情報を確認したい方は、
私が10年ほど前に書いた書籍
「税理士が教える得するパートタイマーBOOK」
をお読みいただければと思います。
【投稿者:税理士 米津晋次】