《コラム》持続化給付金の申請代行を税理士等士業も可能にすべき
新型コロナ感染症拡大により、前年比50%以上売上が減少している事業者に対して、支給されている「持続化給付金」。
(画像引用:経済産業省)
法人で最大200万円、個人事業主で最大100万円が給付されるものです。
返済義務が必要のない「もらえるお金」なので、条件に該当すれば申請してもらえばいいと思うはずですが・・・。
目次
オンライン申請ができない事業者
ところが、この持続化給付金の申請は、オンラインのみとなっています。そのため、高齢者を中心に、パソコン操作が苦手な経営者がオンライン申請できず困っていると聞きます。
実際に、弊所のお客様でも、持続化給付金の申請はしたいが、できそうもない、という相談が入っています。
経済産業省は、全国400カ所を目標にサポート会場を設置
このようなオンライン申請(ネット申請)が困難な人のために、経済産業省では、5月から全国400カ所を目標にサポート会場を設置して支援しはじめています。事前予約制で、必要書類を持っていけば、無料で申請サポートを受けられるようです。
→「持続化給付金」の申請サポート会場を追加で開設します(経済産業省)
ただ、このサポート会場によるサポートを受けづらい事業者もいます。
一番多いのが、必要書類がよくわからない人です。
確かに、必要書類として持っていくものの書類名が記載されています。
でも、たとえば「所得税申告書第一表」といっても、それがどの書類なのかがわからない人も多いのです。
必要書類をすべて揃えることだけでも、事業者によっては並大抵なことではないのです。
また、高齢や健康上の理由や会場までが遠いなどの理由で、会場まで行くことが困難な人もいるでしょう。
仕事の予定が直前までわからなくて、事前予約するのが難しい人もいます。
昼間にサポート受ける時間がとれない事業者もいることでしょう。
ぼったくり代行業者
この持続化給付金の申請を巡り、申請手続き支援で給付額の10~20%以上の多額の手数料を請求しようとする民間業者が相次いでいることが問題になっています。オンライン申請が苦手で、サポート会場でのサポートをうけづらい事業者が利用しているようです。
通常の給付金、補助金、助成金であれば、申請書類の作成もありますので、10~20%の手数料は、適正だと思います。
ただ、この持続化給付金申請は、申請書類の作成も不要で、必要書類をアップロードするだけですから、その手数料は高額だといえます。
手数料がいくら多額でも、申請しないよりはいい、ということで、このような業者に代行をお願いする事業者もあるようです。
個人事業主でも、100万円を諦めるのと、手数料20%の20万円を支払ってでも80万円を手に入れることができれば、その選択をするのもわかります。
支援に最適なのが税理士のはずが問題が・・・
持続化給付金の申請支援に最適なのは、スバリ!税理士です。申請必要書類の多くは、税金の申告関係書類だからです。
たとえば、法人が申請で必要な「法人事業概況説明書」がどの書類なのか、すぐにわかる人は少ないでしょう。
私のお客様からの問合せでも、この書類がわからないというものが多いです。
税理士なら、「法人事業概況説明書」がどの書類かはもちろんわかります。自分で作成していますし。
確定申告書の控えが見つからない場合でも、顧問税理なら申告書の控えを持っているはずです。
売上台帳さえご自身で準備すれば、あとは税理士が必要書類を準備できるのです。
売上台帳も、会計ソフトから出力したものが使えることが多いので、その作成も税理士にお願いすることもできます。
ところが、税理士が持続化給付金の申請代行をすることができません。
「申請フォームの記入、送信を有償で支援することは、行政書士法上、行政書士に限定されている」と、中小企業庁の渡邉政嘉経営支援部長が、2020年5月19日の衆議院財務金融委員会で述べています。
日本税理士会連合会からも、税理士が事業者の申請に係る支援を行う場合の留意点として注意を呼びかけています。
→持続化給付金の申請の支援に係る留意点について(日本税理士会連合会)
申請代行にならない範囲でやるべし、という趣旨です。
給付金申請サポートは、時間がかかる
私の税理士事務所では、やむなく、次の方法での申請サポートを行っています。具体的には、メールが受信できるノートパソコンと売上台帳、通帳や身分証明などを事務所へお持ちいただきます。
お持ちいただいた書類や、提出に必要な税金関係書類を、アップロードできるように画像化します。
そして、お客様の横に寄り添って、お客様のノートパソコンでの申請手続きを、最初のメールアドレスの登録から申請送信完了まで、ご自身の操作で一つ一つ確実に行っていただいています。
ほかの補助金申請なら税理士でも代行可能
申請代行でも「無償ならOK」ですが、申請にもある程度時間がかかりますので、それを無料でやれとは、税理士には酷です。また、社会保険労務士の独占業務である厚生労働省所管の雇用関係の助成金は別ですが、経済産業省や自治体の補助金申請については、税理士などほかの士業も申請代行が認められています。
早急に士業が申請代行できるような変更を
持続化給付金の目的は、新型コロナの影響で窮地に陥っている事業者が廃業や倒産しないようにお金を届けるはずです。しかし、条件にあてはまりながら、様々な理由で持続化給付金の申請を諦めようと思う事業者も発生しています。
そのような事業者を置き去りにしていいのでしょうか。
税理士など事業者に寄り添う士業が申請代行できるように早急に変更を希望します。
【投稿者:税理士 米津晋次】