決算書の見方

決算書とは、企業の決算手続きに基づいて、作成される決算報告書をいい、一般に財務諸表といわれています。 財務諸表は、その報告の目的により、会社法、証券取引法、法人税法等により、作成する事が義務づけられていますが、財務会計の最終目的が財務諸表の作成にあることから、財務会計を制度会計と呼ぶ事もあります。

一般的な決算書の各財務諸表の見方をご紹介しましょう。

 

■貸借対照表

「貸借対照表」ってむずかしい名前ですね。名前だけで、「理解しにくい」って感じがします。英語では、バランスシート(balance sheet)です。この方がわかるような気がしませんか。簡単に説明すると、ある時点(通常は決算期)における会社の「運用と調達の一覧表」ということです。貸借対照表の中央に縦線が入っていますが、その線を境として、左側が「運用」、右側が「調達」です。まだ、わかりにくいですね。

【負債の部・純資産の部=調達】

 右側の「負債の部」「純資産の部」は、どこから資金を持ってきたか、ということです。 たとえば、下の方にある「資本金」というのは、株主が会社へお金を出したものです。新規会社設立時には、このお金が会社の最初の資金になります。 お金が足りなくなると、金融機関等から借入れすることになりますが、この借入金も右側に記載されています。ただ、貸借対照表は、1年基準で「流動資産/負債」と「固定資産/負債」にわけますので、1年以内の返済する借入れは、上の方の「流動負債」に「短期借入金」という勘定科目で記載されます。

 一方1年を超えて返済する借入れは、真ん中あたりの「固定負債」に「長期借入金」という勘定科目で記載されます。いずれにしても、「○○借入金」として「負債の部」に表示されるわけです。 買掛金や未払金、預り金などが右側の負債の部に表示されていますが、これらは、1年以内に支払わなければならないものを、まだ支払っていないことにより、お金が手元にある、というように考えて下さい。

 このように、右側の「負債の部」「純資産の部」は資金をどこから調達しているかを表します。「負債の部」と「純資産の部」の違いですが、「負債の部」の勘定科目は、いつか支払ったり返済したりしなければならないものですが、「純資産の部」は支払う必要のないもの、という違いがあります。

【資産の部=運用】

 次に、左側の「資産の部」です。「負債の部」「純資産の部」から調達した資金をどのように運用しているかを表します。 調達した資金をそのまま現金で持っていれば、資産の部には「現金」だけが表示されます。 しかし、そのような会社はなく、たとえば、定期預金に預けるとか、車や機械を購入する、とかするわけです。 そうすると、「資産の部」には、現金が減って、「定期預金」「車両運搬具」「機械装置」という勘定科目で記載されることになります。

 「資産の部」も通常1年基準で「流動資産」と「固定資産」に分かれます。(ほかにも、一番下に「繰延資産」もありますが、ここでは省略いたします。)

 「流動資産」には、今現在は現金でなくても、すぐに現金化できるものも記載します。

「売掛金」「受取手形」は期日が来れば、通常入金になりますし。「商品」つまり在庫は、売ればお金になるのです。 「固定資産」のうち、不動産や機械、車といった「有形固定資産」は「流動資産」と異なり、基本的にお金にするものではなく、使うために持っているもの、いわば「寝ている資産」という考え方もできます。「固定資産」にはほかに「投資その他の資産」があります。代表的なものが「保険積立金」です。これも、事故があったり、満期が来るまではお金になりませんので、「有形固定資産」と同じく「寝ている資産」とみることができます。

 もう一つ説明しておくべきことがあります。特に「固定資産」ですが、決算書に表示されている金額は、原則として時価ではなく、購入した金額である、ということです。購入した金額より上昇していれば「含み益」が発生し、下がっていれば「含み損」をかかえていることになります。

 

■損益計算書

損益計算書は、字のごとく、「儲けと損」を集計したものです。貸借対照表は、ある時点での状況を表していますから、過去から今までの動きが反映されていることになります。 それに対し、損益計算書は、ある期間(決算書は通常1年間)だけの集計であるところが異なります。

【売上高】

 これはみなさんも理解できると思います。 よく誤解があるのは、売上代金が入金になって「売上高」に表示される、という理解です。 そうではありません。売上代金を回収したかどうかは関係なく、商品や製品を得意先に原則として「納品した」時点で「売上」となるのです。 ですから、未回収の場合には、その金額は、貸借対象表の「資産の部」に「売掛金」や「受取手形」の科目に表示されることになり、現金売上ばかりの場合には、売上高と同額が「現金」に表示されることになるのです。

【売上原価】

 売上原価とは、売上げに直接かかった費用です。仕入れたものでも、売上げになっていないものは、売上原価から除外します。 製造業や建設業の場合は、工場や現場でかかった費用(もちろん売上げになったもののみ)を売上原価に含めます。 ですから、同じ給料でも、工場や現場で働く方は「売上原価」になり、営業や事務の方は、後から説明する「販売費及び一般管理費」に含めて計上されます。

【売上総利益】

 売上高から売上原価を引いたものが、「売上総利益」です。 小売業や卸売業であれば、「粗利益」に該当します。 この売上総利益は、かなり重要な数字です。「いくらで仕入れて、いくらで売ったのか。」「いくらの材料からいくらの製品を作成して売ったのか」という企業活動の儲けを表す数字です。

 ディスカウントスーパーのように薄利でも、売上を多くすることによって、この「売上総利益」を多くする会社と、高級ブランド店のように、あまり売れないが、売れれば利益が多い手段により「売上総利益」を多く会社があります。 この「売上総利益」を多くするためにどのような戦略でいくかにより、たとえ同業社でも数字は異なってきますし、同じような儲けをめざしたのに、結果的に会社の優劣により数字が異なってくることもあります。 一般的には、同業社であれば、「売上総利益率」は高い会社がいい会社といえましょう。

【販売費及び一般管理費】

 これは、商品を売るための費用や、会社を維持していくための費用です。営業、事務部門の人件費や販売促進費、光熱費や通信費などが含まれます。 これらはほとんどが固定費です。売上にほぼ関係なくかかる経費ですから、一般的には少ない方がすぐれているといえましょう。

【営業利益】

「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を引いたものが「営業利益」です。 「本業での儲け」を意味します。財テクや不動産投資で儲けたものは、本業ではありませんので、この「営業利益」には入りません。 ほかにも、借入利息や預金利息といった金融収入や費用も含まれません。

【経常利益】

 営業利益に、本業でない損益を反映させたものが「経常利益」です。よく「ケイツネ」といわれます。 先ほどの営業利益の説明の中で含まれなかった金融収入や費用はここで反映されます。 ただし、投資目的でない土地を売ったような臨時的な損益は、ここでも含みません。

【税引き前当期純利益】

 「経常利益」に、臨時的な損益を加減算したものが、「税引き前当期純利益」になります。 法人税などの税金を引く前の利益です。

【当期純利益】

 「税引き前当期純利益」からさらに法人税・住民税・事業税の年税額を控除したものが「当期純利益」となります。 この「当期純利益」が最終の利益ということになります。

このように○○利益は5種類も出てきましたが、それぞれ意味が異なります。 当期純利益が大きく出ていても、営業利益が赤字といった場合は、本業では儲けていないわけですから、今後も業績が心配されます。 反対に、営業利益がかなり黒字にもかかわらず、当期純利益がマイナスになった場合は、臨時的な費用で赤字になったわけですから、来期以降は黒字になる可能性が高いことになります。

 

■キャッシュフロー計算書

損益計算書で利益が出ているのに資金繰りが苦しい、といったことをよく聞きます。 売上高のところで説明しましたように、売上や費用は、お金を回収した、支払ったこととは無関係に計上されるものです。 ですから、たとえ利益が出ていても、お金が寝ていたりすれば、手元にお金がないことになります。

売掛金や受取手形、商品の金額が多くないでしょうか。 固定資産を購入しなかったでしょうか。 また、借入れの返済が多い場合にも、同様になります。返済金のうち元本部分は、お金は出て行っていますが、費用にならないのです。費用になるのは支払利息のみです。ですからお金がなくなるのです。このような状態を、貸借対象表や損益計算書だけから読み取ることは困難ということで作成することになったのが「キャッシュフロー計算書」です。

「キャッシュフロー計算書」は名前のごとく、現金の動きを表します。 表示方法には大きく二種類あり、お金の出入りを集計したものを直接法といい、損益計算書の利益から始まって、お金の動きとの差額を表す方法を間接法といいます。間接法では、利益が出ているのに手元に現金がない理由が、表示されているのです。 売掛金が期首より期末が多くなれば、利益からマイナスします。商品の在庫が増えていれば同じようにマイナスします。さらに借入返済のうち元本部分もマイナスしていきます。逆に新規借入をしたのであれば、プラスです。 このようにして決算書の利益と手元にある現金の差がなぜ発生しているのかがわかるのです。

損益計算書の利益が何種類もあるように、キャッシュフロー計算書も区分を設けています。 本業でのお金の増えた分を、「営業活動によるキャッシュフロー」として表示し、固定資産の売却・購入による増減を「投資活動によるキャッシュフロー」、金融収入・費用による増減を「財務活動によるキャッシュフロー」として表示します。

損益計算書で「営業利益」が重要なのと同様に、「営業活動によるキャッシュフロー」の数字が一番重要です。 この数字がマイナスになる、つまり、本業でお金が増えないということは、かないの重傷であり、早急に経営改革が必要な状態にあるといっていいでしょう。

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