難しい仕分けの解説(賃貸契約)
会計記録をつけるには、さまざまな取引をすべて仕訳に表さなくてはなりません。どんな仕訳にすればいいのか、科目は何にすればいいのか、経理担当者はよく悩みます。どうやって仕訳をすればいいのでしょうか?
■賃貸借契約(基本)
建物を賃借する場合には、敷金・保証金、礼金(又は権利金)、家賃、仲介手数料を支払うことが多いようです。将来返還される「敷金・保証金」は「敷金(又は保証金)」(投資その他の資産)として、資産に計上します。将来返還されない「礼金や権利金」は、「長期前払費用」として、これも資産に計上します。この「礼金や権利金」は、税務上「繰延資産」に該当します。税務上の償却期間(通常5年)において、期間の経過にしたがって、損金へ振替えていきます。
家賃は1ヶ月分の前払いです。本来は「前払費用」です。しかし、税務上は損金への計上が認められていますので、「地代家賃」で処理することも可能です。仲介手数料については、権利金等と同様に建物を賃借するために直接要する費用であり、税務上繰延資産として償却すべきものと考えられますが、仲介手数料の額は、宅地建物取引業法の規定により1ヶ月分の家賃に相当する金額にすぎないこと等、重要性の原則から支出時の損金の額に算入できるものとされています。
したがって、上記をまとめると、
< 敷金(又は「保証金」) ××× 円 / ○○預金 ×××円 > :敷金(保証金)
< 長期前払費用 ××× 円 / :礼金(権利金)
< 前払費用(又は「地代家賃」) ××× 円 / :家賃
< 支払手数料 ××× 円 / :仲介手数料
となります。
■賃貸借契約(保証金の償却がある場合)
「保証金は将来すべて返金される訳ではないし・・・・」
どうやって仕訳したら??
建物を賃借する場合に支払う保証金のうち、一定金額は償却されて将来戻ってこない契約になっていることがあります。
(1)当初から返還されない部分の金額は、権利金と同様に処理します。契約書上、「○%償却」と記載されていることが多いようです。
< 長期前払費用 ×××円 / ○○預金 ××× 円 >
(2)契約期間に応じて保証金の返還額が変わる場合もあります。たとえば、「5年まで50%、10年まで20%、10年超返還なし」といった場合、当初契約時に、保証金の50%は権利金として処理します。
< 長期前払費用 ×××円 / ○○預金 ×××円 >
(50%分)
5年経過した時点で、保証金のうちさらに30%が戻らなくなりますので、
< 長期前払費用 ×××円 / 保証金 ×××円 >
(30%分)
10年経過した時点で、保証金のうちさらに20%が戻らなくなりますので
< 長期前払費用 ×××円 / ○○預金 ××× 円 >
(20%分)
※もちろん、その戻らない部分の金額が20万円未満であれば、少額繰延資産として一時の損金とすることができます。